全快のめどがなく、すぐに命の灯が消失しようとしている瞬間でも、今の時代の医療は、あなた方を生かし続けていくという事を推進します。
人工呼吸器を付けて体の中に酸素を送り、胃に穴をあける胃ろうを着けて栄養摂取させるでしょう。とにかくこういった類の延命措置を開始したら、取り外すことは簡単ではありません。
生命維持装置をはずせば死に達するということが確実ですから、医師がはずそうとしたがらないのです。
「さまざまなことを利用して生きたい」といわれるたくさんの人々の意思も、尊ばれるべきこととなります。それに対し、チューブや器具につながれて、加えて辛い闘病をもたらされ、「完治のめどが見えないのなら、穏やかにそのような時を迎えたい」と希望される方々もたくさんいます。
「平穏死」「自然死」を望んでいる人たちが、ご自身の意思を健やかな内に書き綴っておく。それがリビングウイル(LW)です。
LWは、「生前意思」なぞと訳せばよろしいのでしょうか。言わば「命の遺言状」です。「自身のいのちが不治および末期であったら、延命措置を施さないでもらいたい」と主張して、記載しておくわけです。
延命措置はやめていただき、苦痛を取り除ける緩和に重きをおいた医療にベストを尽くしていただく。
LWでは自分自身が意識を失くしてしまったケース、ないし意思決定がつかない状況に陥ってしまった時でも身内がその考え方を生かせるよう、まわりの親せきやお友達に配る方がいいでしょう。
もし、LWが不要になったときは、いつでも退会することが出来ます。そういった場合、LWを配った親せきやご友人に対しても、LWを取り止めた旨の連絡をされるほうが良いでしょう。
「尊厳死」と「安楽死」の違うところは?
死期が間近に迫った患者には我慢できない身体の苦痛があって、患者が「早く逝かせてくれ」といった考え方の持ち主であるということがはっきりとした場合でも、医者が積極的な医療行為によって患者を死なせる事を安楽死と呼びます。
延命措置はやらないこととは、まさしく異なっていますし、日本においては患者を安楽死させてしまった事件では、どっちとも医者の有罪判決が確定されています。
欧米などにおいては、この安楽死を合法に認めている国・州がありますけれど、日本尊厳死協会は安楽死を容認していないです。
延命措置とは
LWに書いている「延命措置」については、回復のめどがないと診療を受けた患者で、死期が近くなっていながらも、人工呼吸器や透析、胃ろうなどを使って生命をキープするための対応です。意識があったとしても人工呼吸器を装着しているとお話することができませんし、病気による苦しみとも闘わねばいけないのです。
苦痛を和らげる緩和医療
延命措置を拒否しても、苦痛や呼吸の辛さを楽にするための医療行為はなくては困ります。延命措置は拒否しても、こういったものの緩和医療は最優先にやってもらうことが、穏やかな最後を迎え入れるための必須とされる条件だと言えるかもしれません。
LWの2番目の項目に、こういった緩和医療が組み込まれているのは、そのためと言えます。今日この頃は麻薬の取り扱い方法も分析され、苦痛からも解き放たれる治療が進んできているのです。
リビング・ウイル(終末期医療における事前指示書)について
http://www.songenshi-kyokai.com/living_will.html より
一般財団法人 日本尊厳死協会
1.日本尊厳死協会発行の「リビング・ウイル」(以下LW)は、人生の最終段階(終末期)を迎えたときの医療の選択について事前に意思表示しておく文書です。表明された意思がケアに携わる方々に伝わり、尊重され、あなたが自分らしく誇りを持って最期を生きることにつながります。
2.このLWは、ご自分が意思表示できなくなった状況において、意に添わぬ、ただ単に死の瞬間を引き延ばす延命措置を受けずに済むようにするものです。一時的に生命維持が困難になった患者の回復を目的とする「救命」を拒むものではありません。
3.外傷や神経、心臓、肺などの病気、あるいは遺伝性の病気により、人工呼吸器等の生命維持装置を使い生活されている方にとって、生命維持に関わる措置は延命措置ではないことは言うまでもありません。
4.もしもの時、どのような医療を望むか、望まないかはあなた自身が決めることです。これは憲法に保障されている基本的人権の根幹である自己決定権に基づいています。
5.LWを作成するにあたり、終末期の様々な状態と措置について、当協会や厚労省の資料などから適切な情報提供を受け、内容をよく理解した上で、最善と思う選択をしていただきます。
6.LW作成にはかかりつけ医や医療チーム、訓練を受けたアドバイザーから十分な説明を受け、ご家族を含めた話し合いを繰り返し、よりよい選択をすることを推奨します。この相談過程をアドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning:ACP)と言い、現在、LW作成に望ましい形とされています。
7.ご家族や医療者との話し合いや合意は望ましいのですが、最も優先されるべきはご本人の意思です。LWを作りたくない方は作る必要がなく、強制されたものは無効です。大切なことは、医療者、ご家族、あなたをサポートしてくれる方とLW情報を共有し、理解し合えることです。
8.このLWは、署名者本人の考え方が変われば、いつでも破棄、撤回することができます。病状の変化、医学的評価の変更があれば、人の常として気持ちが変わることもあります。たとえば、年の初めや誕生日などにご自身の意思を確かめておくのも大切です。
人生の最終段階(終末期)とは:
かつては終末期という表現をしていましたが、人生の最終段階には、がんの末期のように、予後が数日から長くとも2-3ヶ月と予測が出来る場合、慢性疾患の急性増悪を繰り返し予後不良に陥る場合、脳血管疾患の後遺症や老衰など数ヶ月から数年にかけ死を迎える場合があります。どのような状態が人生の最終段階かは、患者の状態を踏まえて、医療・ケアチームの適切かつ妥当な判断によるべき事柄です。(厚労省「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」より引用。)
認知症については、生命予後が極めて悪くなるような身体症状の出現をもって末期と考えます。
生命維持に対する措置とは:
人工呼吸器装着、中心静脈管や胃管などを通した人工栄養補給、水分補給、腎臓透析、化学療法、抗生物質投与、輸血など。
「私の希望表明書」について
協会発行の「リビング・ウイル」(以下、LW)は、もしものときには「私は、延命措置を望まない」という、包括的な事前指示書です。LW尊重の医療は定着してきていますが、医療技術は日々進歩し、超高齢社会の到来による認知症患者の増加など社会情勢の変化も著しく、人生の最終段階のあり方もいろいろな考えが生まれています。人それぞれの思いにつながる「最期を過ごしたい場所」や「食べられなくなったら」を考える人が増えています。協会LWだけでは伝えきれない「私の希望」を伝える表明書をご用意しました。
ご記入、ご利用に当たり
○「私の希望表明書」は、日本尊厳死協会会員が協会に登録した「リビング・ウイル」に付随し、補完する文書です。2018年1月から発行しました。
○ただ「私の希望表明書」は協会LWと違い、協会に登録する文書ではありません。必要とする会員が記入し、個人的に保管する文書です。
○「あなたの意思表明書」ですから、記入日、氏名は直筆にしておきましょう。
○希望事項はチェック方式で記入します。文書記載の項目以外に医療やケアに関する希望、あるいは思いに関する情報がありましたら、「その他」に書き留めておけばよいでしょう。
○自分でわからないことや、決められないことは記入しなくても構いません。
○何らかの理由で、あなたの思いや希望が変わったときは、いつでも撤回、書き改めることができます。変更したときは、その日付をわかるようにしておきましょう。
○書き換える時に備えて、記入前に予備をコピーしておくことをお勧めします。用紙はこのホームページからダウンロードできます。
○「私の希望表明書」は本体の「協会LW」と同様、医師やご家族、あなたをサポートしてくれる方々と情報共有しておくことが大切です。「私の希望」をみなさんに伝えておきましょう。
*上の画像をクリックすると、「私の希望表明書」(PDF)ダウンロードページに移動します。